小さなコンサートホール
医院建築の在り方を考えてみると、最近のものは、どこか同じ様相であり、独自の主張さえも消去されたような建築が多く見受ける。
クリニックとカウンセリングサロンの計画には、ホールを併設させるという今までにない個性的な用途を持っており、地域医療における可能性を模索した。クリニックで催されるセミナーや小コンサート等に対応できるよう、待合ホールは吹抜け空間を持つ大空間とした。
この待合ホールには、エントランスや外部から見える正面の内壁に厚みの異なる天然木タイルを貼り、ホールの音響を調整すると同時に、ここに訪れる患者やセミナー参加者に天然木の豊かな風合いや香りが心地良い印象とした。
併設されたヒーリングサロンは、利用されるお客様の視点からも、心理的な安心感を与えつつしっかりとした運営をサポートできるよう、サロンは、プライバシーを重視しつつも閉鎖的な空間にならないように考慮している。またサロンのエントランスとヒーリングルームの間に中待合を設け、お客様同士のプライバシーの配慮や、ヒーリング前の心の調整を促す空間を用意された。
一般的な医院建築のイメージにはない独自の使われ方や運営方法、また医院建築の課題でもある施設色の硬さに対して、この施設は利用される方々がこの建築を通じ、少しでも心地良さを感じて頂き、治療を受ける行為以外にも何か受け取ることのできる空間を創造することを願い、この地に相応しいクリニックの新たな形を創造した。
建築場所 | 静岡県 |
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用 途 | クリニック(内科・皮膚科) |
構造規模 | 木造一部鉄骨造 |
設計監理担当:大矢雅祥