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街を内包する家

以前、海外旅行をした時に訪れた小さな街は、まだ観光客に侵されていない素朴でゆっくりとした場所だった。その街を心が赴くままに散策しながら見た風景や場面は今でも鮮明な映像として心に残っている。
路地を挟んで向かい合う窓越しに会話をしながら物干しをする女の人、小さい広場で戯れる子供達とそれをベンチ に座って微笑ましく眺める老夫婦、トンネルの向こう側に見える眩い光を見つけたときの期待感。そこには家族と家族、街と人、街と風景の関係や距離感が気持ちの良いバランスで成り立っていた。
敷地は住宅街の一角にあり、南側が道路、東、北を建物に囲まれ、西側は宅地造成されている。施主の建物に対する要望は家族それぞれのプライバシーを大切にしながらも家族の繋がりを感じる空間、 好きな絵や大切なピアノ、アンティーク家具が映える空間、また、40坪程の敷地に対しての面積配分を 庭などの外部空間ではなく、内部空間に費やして欲しいことなどがあげられた。
施主の要望を整理している時、脳裏に蘇ったのは前文で述べた街の風景であった。それが今回の施主の要望 に対しての回答になると考えたからだ。
リビングとダイニングに配置された2つの吹き抜けは、光が満ち溢れた「広場」として、家族が繋がるコミュ ニケーションの場となる。吹き抜け空間に面する開口部を持った室は、閉じることで個人のプライバシー を保ち、開くことで家族の繋がりに参加できる場となる。廊下や階段は「路地」のように目線の抜けや止まり、 光の濃淡などを繰り返し、次の空間への期待感を産む。溜まりのようなホールや吹き抜けのブリッジでは、 また新しい家族のコミュニケーションが生まれる。個と家族と空間、それぞれの関係や距離感が気持ちの良い バランスで成り立つ事を目指した。
そしてこの空間に施主が大事にしているモノ達を配置することで空間に独自のストーリーが加わり、 これからの生活がより印象深い風景となって施主の記憶に刻まれていくだろう。私の頭にはっきりと残るあの街の風景のように。

建築場所 静岡県
用  途 専用住宅
構造規模 木造2階建
敷地面積 142.30m²
建築面積 79.16m²
延床面積 134.23m²

設計監理担当:木村真輔(旧所員)、大矢雅祥


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