メインイメージ

大通りの三角屋根

間口3.8m、奥行き約30mの間口の狭い敷地における住居の建て替え計画である。かつて街道であった敷地前の通りは、戦前の都市計画によって幹線道路につくり替えられたが、土地の区画は当時の名残から細長いままとなっている。うなぎの寝床のような細長い建物が今でも各所に点在している一方で、多くの建物が建て替え時期を迎えており、敷地をつなげてビルや集合住宅に建て替えるケースが目立っている。それでもこの敷地に新しい住居を構えたいという家主の想いから、このような敷地でも豊かに生活できる方法を模索しながら計画は進められた。
建物は大通りから1m程度セットバックさせ、正面に小さな庭を設けた。1階は庭に面した土間から、客間、キッチン・ダイニング、ガレージへと空間が連続している。朝には土間から光が差込み、途切れることなくダイニングまで届く。日が登ると今度はダイニングに設けられた小さな坪庭から柔らかい光が入り、斜めの収納壁が照らされることで空間が明るく感じられるよう計画されている。
明るい2階は自室での時間を大事にする家主の個室として用意された。個室外側のインナーバルコニーは大通りからの音の干渉帯となる役割のほか、ベンチに座って思い切り外の景色を満喫できる居場所である。
建て替えの進む幹線道路沿いの敷地にあって、この三角屋根の建物が豊かな住まいの指標となっていくことを期待したい。

建築場所 静岡県
用  途 専用住宅
構造規模 木造2階建
写真撮影 スタジオメロス

設計担当:大倉健、大矢雅祥


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