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本の家

敷地の北側には交通量の多い国道と、西側にはパチンコ店が隣接している。 この土地は、国道や店舗ができる以前からある敷地である。 建主はこの地で生まれ育った。

既存の住宅は昭和初期に建てられた土間のある典型的な日本家屋であり、 たくさんの記憶が残る住まいであったが、老朽化が激しいため建替えを考えた。

計画を進めるうち建主が長年収集してきた数千冊にものぼる「本」が 心の奥底にある大切なものであることがひしひしと伝わってきた。
建替えを行うにあたり、その大切な本たちをなるべく良好な状態で保管でき、 家のどこにいても手に取りやすく身近に感じられるように計画をすすめた。

書庫を家の中心に設けそれを取り囲むように玄関、リビング、ダイニング、 寝室を配置させ四方のどの部屋からでもアクセスできるプラン構成とした。
書庫には小さな天窓を設け、やわらかな光が射し込むなかで周辺の雑踏から 隔離されゆっくりと本と向き合える大切な場となっている。

建物の様相もまた、周囲の建物や既存樹木よりも低く抑えられ、建主の記憶の染み付いた 既存住宅の環境設定から著しく変化しないように配慮した。

建主の大切に思う「もの」「こと」「記憶」を丁寧にひろい集め必要な要素を整理した。 それが、今まで建主が培ってきた生活のリズムを大切にしたプランとなって内外部へと波及している。

今、この場所で周辺環境とは全く異なる時間が流れ、 記憶と心情、いつまでも変わらないものがゆっくりと集積し続けている。

建築場所 静岡県
用  途 専用住宅
構造規模 木造平屋建
敷地面積 544.68m²
建築面積 109.91m²
延床面積 109.91m²

設計監理担当:大矢雅祥、中村幸浩(旧所員)


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