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桜色の家

藤枝市の中央に流れる瀬戸川。 その土手沿いを2kmに渡り桜並木のトンネルが続く、いわずと知れた桜の名所となっている。 敷地はその桜並木を北側にもち、長手方向に隣接している。

桜並木と敷地とは、高低差もあることから桜を「見る」よりも「見上げる」ほどで、敷地に対し覆いかぶさるようである。 桜の名所ということもあり、朝夕日課の散歩をする人たちや川辺で遊ぶ家族連れなど人の行き来も多い。

私たちはこの敷地において、いかに、高低差・交通量や目線などの問題をクリアした上で、 この地域の原風景である桜並木を採り入れることを目指し、 桜と共に成長していく家族と、この家に集い桜を楽しむ人々をイメージしながら設計は進んだ。

敷地と堤防の高低差は4m。1階のリビングでは桜を見ることは通行人から見下ろされてしまう為、リビングを2階に設けることとした。北面の壁を床から1.7mの高さまで上げ、通行人から一切目線をあわさぬようにし、 建物長手方向すべて開口をとることで2階のどこからでも桜を見ることができる。天井の高さは北面を3m、南面を2.4mと勾配天井とし、「桜を眺める」行為をかたちにした。 建築そのものが桜並木を見上げているかのようで、家がなにげなく桜に向かってそっと人抱きかかえたように感じた。

桜の咲く頃、 朝ロールカーテンを開け、桜が咲いているか一厘ずつ子供たちと探す。 家族は、少しずつ咲いていくこと楽しんでいた。年に一度しかないこの時を、めいっぱい味わうことができる。 ここでしか味わえない時間こそ、「贅沢なとき」ではないだろうか。この豊かな時間を共に過ごす家族もまた、豊かな心に成長していくのだろう。 そして桜は満開となり、南面の窓を抜け北面の窓のむこうに満開の桜並木を覗くことができた。 家に桜が取り込まれているようだ。

文字通り、「桜色の家」となった。

建築場所 静岡県
用  途 専用住宅
構造規模 木造2階建
敷地面積 215.08m²
建築面積 76.59m²
延床面積 142.83m²

設計担当:大矢雅祥、中村幸浩(旧所員)


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